「この薬、副作用はありますか?」
「副作用がでるかもしれないなら、のみたくありません。
副作用のない薬に替えてください」
「〇〇という週刊誌に、この薬は飲むなとかいてありました」
ときどき、患者さんからそのようにいわれることがあります。
調剤薬局でもらう薬は医師が診察して処方しているものですし、ドラッグストアでは薬剤師や登録販売者が患者さんから必要な聞き取りをしてから販売していますから、基本的に副作用をそれほど心配することはありません。
ただ、自分が服用する薬の「起こりうる副作用の症状」「副作用を防ぐための注意」について薬剤師から説明があると思いますので、そこだけは気を付けておいてください。
そして、そのような症状がでたら、すぐに医師・薬剤師に連絡をしていただくことが大事です。
副作用がおこるかどうかは、のんでみないとわからない
まず大前提として、残念ながら、副作用が起こる可能性がない薬はほぼありません。
ビタミン剤や胃薬でも、気分が悪くなった、と言われることもあります。
漢方薬なら副作用がないから、と希望される患者さんも多いですが、漢方薬にもちゃんと(?)副作用のリスクはあります。
薬剤師が悩むのは、副作用の説明をすることで服薬を拒否されたり、副作用の症状を説明すると「自分にもこんな副作用が起こるのではないか」という思い込みが起こり、その通りの症状がでてしまったりする場合です。
かといって、副作用の説明をしない訳にはいきませんから、その方に合わせて、過度に心配されないよう、注意しながらお話しする、ということになります。
副作用のリスクがあるのになぜ薬を服用するか。それは、副作用が起こるリスクよりも、薬を服用せず放置することで将来重大な疾患が起こりうるリスクの方が高いと思われる場合です。または、現在の不快な症状を放置することで、日常生活に大きな支障がある場合。
たとえば血圧の薬。「高い血圧を放置しておくことで将来、脳梗塞、心筋梗塞、腎不全などを起こすリスク」と、「薬の副作用」を天秤にかけ、どちらがより患者さんにとってメリットがあるか(健康を増進し、寿命を延ばすか)と考え、たいていの場合は「薬をのんだほうがいいですよ」ということになります。
薬は本当に必要なのか?
薬に対して懐疑的な方がよく言われるのは、
「うちの父は血圧が200くらいあったけど長生きだった。血圧は関係ないはずだ」
「禁煙をするようにいわれたが、隣のおじいちゃんは、何十年も吸っていて健康だ」
など。そして、
「製薬会社や病院が儲けたいから薬を出してるんだろう!」
・・・何度も、そういわれました。
当然ですが、体質は人によって違います。
暴飲暴食したり、塩分を多めにとっていても、糖尿病や高血圧にならない人がいる一方で、かなり注意していても検査で異常を指摘される人もいます。
喫煙していても何ともなく一生を終える人もいますが、その影響で肺疾患になる人もたくさんいます。
自分がどちらに入るか、病気になってみないと分かりません。
そして、疾患によっては、治療により元通りになるとは限りません。
例えば、血圧が高いと色々な合併症を引き起こす可能性が高まることは、数多くの研究により証明されています。
もちろん、薬を飲む前に、生活習慣が乱れている場合はそれを整えることが重要です。多くの患者さんで、体重を落とすだけで血圧やコレステロール値が下がります。それで不十分な場合、薬の力を借りたほうがいいよ、ということになります。
人の薬をもらわないで!
ときどき、このような話をききます。
「この間血圧を測ってみたら高かった。それを話したら、友達が自分がのんでいる血圧の薬を分けてくれたので飲んでいた」
「自分のシップが余っていたから、友達に分けてあげた」
これ、本当に危険です。薬のやりとりは、しないようにお願いします。
調剤薬局でもドラッグストアでも、お薬をお渡しする場合には、その患者さんの併用薬やアレルギー、副作用歴、既往歴や現病歴を確認したうえでお渡ししています。
また、飲み方の注意、副作用についても説明をしています。
自分のお薬をあげる人は、全く悪気はなく、しかし多分副作用のことまで考えていないでしょう。
たかがシップ、といっても、成分によっては光線過敏症がでて全身に炎症が広がったり、喘息の発作がでることもあります。
血圧の薬も、色々な種類と量があり、その方に合った薬が処方されています。
お友達に譲ったりすると、思わぬ副作用がでる場合があります。
面倒でしょうが、薬は自分でもらったものを使うようにしてくださいね。
医薬品副作用被害救済制度
医薬品を正しく使ったにもかかわらず副作用が起こり、入院したり、後遺症が残ったり、死亡した場合には、その治療費や年金などの給付が受けられる制度があります。
救済制度相談窓口 0120-149-931(平日9:00-17:00)
これは副作用の治療を行った医師の診断書が必要になります。
もし入院が必要になったなどの副作用が起こった場合は、前述の相談窓口に問い合わせていただくか、病院や薬局で相談してください。