くすり

【ジェネリックって安全なの?】(後編) ジェネリックに変更しないほうがいいケース

 

こんにちは。

 

今回は、ジェネリックをお勧めしないケース、または、慎重に検討するべきケースについてお話します。

 

れお
ジェネリックは基本的には先発品と同じ効き目があるものですが、製剤技術の違いや、塗り薬の場合は基剤が違うために、人により、場合により、変更しないほうがいいこともあるんです

 

 

塗り薬(例:ヒルドイドクリーム)

 

塗り薬については、有効成分は同じですが基剤が違うため、その効果に違いがでることがあるといわれています。
(基剤とは、塗り薬の有効成分以外のものです。例えば、グリセリンや、ワセリンなどがあります)

そのため、特に皮膚科の医師からは、ジェネリックにしないほうがいいといわれることがあると思います。

 

ヒルドイドクリームについては、2019年に、先発品に比べてジェネリックの保湿力が劣る、という論文がでています(「基礎発汗誘導能に着目したヘパリン類似物質含有保湿クリーム先発品と後発品の生物学的同等性評価」淺沼由美子、北原里恵、林田優季、青山裕美 日本皮膚科学会雑誌129巻(2019)10号)。

 

私自身は、ヒルドイドをジェネリックに変更した患者さんから、「効果が悪かった」ということは聞いたことがありませんし、「よく効いている」という方が多いと思います。

 

しかし、症状により、あるいは医師が経過をみて「効果が悪い」と思われた場合などは「ジェネリックにしないように」とか「前回まではジェネリックだったが、今回からは先発品をもらうように」と指示されることもあるでしょう。

 

 

ホクナリンテープの後発品(喘息+皮膚のうすい方は注意)

 

気管支を広げて呼吸を楽にするお薬です。1日1回貼ることで皮膚からお薬が吸収され効果を発揮します。

ホクナリンテープは先発品の商品名で、ジェネリックは「ツロブテロールテープ」という名前です。これは、風邪で気管支炎になった時にもらったことがある方も多いと思います。

 

喘息のためこの薬を使っている方で、アトピー性皮膚炎・皮膚の乾燥があり角質層にダメージがある方・皮膚が乾燥しがちな高齢者などの場合、この薬のジェネリックをお勧めできません。

 

先発品は、その独自の構造(結晶レジボアシステム)により、皮膚の状態にかかわらず、24時間にわたり一定の速度でテープからお薬を放出します。

 

しかし後発品では、先発品の製剤技術が使えないので、角質層にダメージがある場合、放出速度がコントロールできず、一気に有効成分を放出してしまいます。

 

すると、いままでコントロールできていた喘息の患者さんに発作がおこったり、症状が悪くなることがあります( ;∀;)

 

もちろん、皮膚にダメージのない方については、先発品、後発品どちらを使っても大丈夫です(^^)v

 

 

てんかんの薬

 

てんかんの薬の服用によって長く発作が抑えられている患者さんの場合、先発品からジェネリックにかえたり、ジェネリック同士でもほかのメーカーのものにかえたりすることで、発作が再発したり、副作用がでることがあります

てんかんの薬は、少量の変化で発作の再発がおこることがあります。その結果として、事故を起こすなど重大な結果を招く可能性もあります。

 

お薬の切り替えはできるだけ避けたほうがよいと思われます。

 

どちらを使うかについては、医師とよく相談の上、決めてください。

 

また、「帰省中に手持ちの薬がきれて、同じメーカーのものが手に入らない」などということが起こらないように、普段からすこし余裕をもってお薬をもらうことをお勧めします。

 

日本小児神経学会、日本てんかん学会は、次のように提言しています。

「てんかん患者の抗てんかん薬治療においては、先発医薬品と後発医薬品、あるいは後発医薬品同士の切り替えに際して、医師および患者の同意が不可欠であるとともに、充分な情報提供が求められる」

 

 

抗がん剤、免疫抑制剤

 

抗がん剤や免疫抑制剤については、値段が高く、ある程度の期間服用を続けないといけないものですから、ジェネリックにすればかなりお薬代の負担を軽減することができます。

 

この場合、処方せんに「変更不可」の記載がなく、オーソライズドジェネリックがあれば迷うことなくジェネリックに変更したいところです。

 

医師の中には「ジェネリックに対して不安があるので、先発品にしてほしい」とおっしゃったり、処方せんに「後発品に変更不可」の記載をされる方も少なくないと感じます。

 

患者さんは治療費以外にも様々な費用がかかりますし、お薬代は軽視できないところだと思います。もしも経済的に厳しいという状況であれば、それを医師とよく相談し、お互いに納得のいく形で治療を受けていただきたいと思います。

 

 

アダラートCR錠の後発品(下痢があるときは血圧に注意)

 

こちらもホクナリンテープと同じく、先発品の製剤技術が、後発品では使えないことで問題がおこる場合があります。

 

先発品のアダラートCR錠については、小腸上部でゆっくり有効成分が溶け出す外層部と、結腸で比較的速やかに溶け出す内核錠を組み合わせた有核二層の製剤で、1日1回の服用で24時間効果がつづくようになっています。

 

ジェネリックのニフェジピンCR錠は、先発品と同じ技術は使えないのですが、同じ効果が得られるように工夫されています。ですので、たいていの場合は、ジェネリックに変更することに問題はありません。

 

しかし、数社から販売されているニフェジピンCR錠の中には、次のような注意書きがあるものがあります。

 

「体調(下痢など)により服用後短時間で排便された場合、まれに錠剤の一部が排出されることがあります。

もし、服用期間中に血圧が下がらなかったり、体調に異変を感じられましたら医師または薬剤師にその旨をお伝えください。」

(これは、例としてニフェジピンCR錠「日医工」の患者さん向け指導せんより一部抜き出したものです。)

 

通常、薬がそのままの形で便にでてくるものを「ゴーストピル」といい、有効成分が吸収されたあとの抜け殻であり、心配はいりません。

しかし、この注意書きは、下痢をした場合、薬が溶け切らないうちに便とともに排出されてしまう可能性があるということです。そうなると、薬の効果が減りますので、安定していた血圧が上がってしまうことがあります。

 

そのため、よく下痢をする方の場合は、ジェネリックにする場合、薬剤師とよく相談していただくことをお勧めします。

 

私の経験の中では、ジェネリックで血圧のコントロールが不良になったと聞いたことは数例しかなく(それも下痢が原因ではありませんでした)、ほとんどの方は問題ありませんでした。

また、長期的に服用することが多い薬ですから、ジェネリックで負担金が安くなることを喜ばれる患者さんが多いです。

 

 

結論:変更については医師、薬剤師とよく相談を

 

ジェネリックの変更については、医師が「変更してほしくない」と考えるものについては、処方せんに「変更不可」の記載をすることができます。

しかし、変更してほしくなかったのに、「変更不可」のサインをし忘れて、薬局で患者さんがジェネリックを希望し、ジェネリックに変えられてしまっていた、ということもあります。

 

ですから、患者さんができるだけジェネリックでもらいたいと考える場合、診察時、医師に「ジェネリックをもらっても問題ありませんか?」ときいてみてください。

もし、医師が先発品を勧める場合にも、経済的な理由で強くジェネリックを希望する場合には、そのことをよく医師と相談してみてください。

薬局では、患者さんのジェネリック希望があれば、ジェネリックに変更して問題ないかを薬剤師が判断しています。

 

「前編」でお話したように、ジェネリックでお渡しする割合が一定以上になると、薬局は後発医薬品調剤体制加算という点数を算定できます。また国の医療保険財政の事情もあります。
ですから薬局としては基本的に、できるだけジェネリックをお渡ししたいと考えます。

しかし、それで患者さんの病状の改善が遅れたり、調子が悪くなったりすることが懸念される場合、薬剤師は先発品を勧めるはずです。

 

ジェネリック希望の場合、できるだけ医師の意見を聞いておくこと。

そして次回受診時は、医師にお薬手帳を見せておくこと。

薬局では(特に複数の薬局に行かれる場合は)お薬手帳を持参すること。

体調に変化があった場合は、すぐに医師、薬剤師に連絡すること。

以上のこと、ぜひお願いします。

 

 

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